週末はWan・Can・Run!

イギリスのパブ・ビールにはまって本まで出してしまったが、娘が生まれてからは、飲みに行くとツマの冷たい視線が来るようになり・・・娘がパパから離れていく頃、念願のワンを迎えて、リュックに缶ビールを忍ばせて週末あちこち散歩の日々。イギリスを始めとするパブ情報のWebページはhttp://terryspub.nobody.jp/に引っ越し、休眠中。イギリスでのパブ旅については、こっちのほうに仮にアップしています。https://terryspub2009uk.hatenablog.com

Mission Impossible「ザ・プレミアム・モルツ講座」

http://d.hatena.ne.jp/terryspub/20120331/1333208195
↑今年3月からの新しい「プレモル」について以前嘆いたが、自虐的にサントリー武蔵野工場の「ザ・プレミアム・モルツ講座」なるものに行ってみた。
ただ一つの意見を言いたいために・・・。

http://www.suntory.co.jp/factory/musashino/inspection/premium/index.html
とはいえ、ビール工場見学といったら、説明係が若い女性社員の研修代わりとなっており、何か込み入った質問をしても、「はぁ?(汗)ちょっと聞いて参ります」となっている間に、試飲が飲めなくなったりした苦い経験もある。それが、5年前位にここに普通の工場見学にきたときの話。今回は、試飲のときはきっちり飲む!という、われわれにとってはとてつもなく重要なミッションもある。

http://topics.blog.suntory.co.jp/004277.html
↑これを見る限り、この講座は、一般の工場見学とは違い、醸造技師が説明する、もっと上級向けのものらしい。

事前に片山修の『なぜ ザ・プレミアム・モルツは 売れ続けるのか?』: (小学館文庫) を読むなど一応いろいろ予習して、質問も用意して、まるで死地に赴く戦士のような決意で望む。リーサルウェポンとして、あの意見を最後にぶちかますのだ・・・。



さて、「今回の講座はこんな3部構成になっています」と、若い女性が。そうか、第1部の「概要」はこの人で、第2部の「工場見学」と第3部の「試飲」時に醸造技師が来るのだな。今日は土曜日だからフルで醸造技師がしゃべるのは無理なのだろう。じゃ、しょうがない、質問やアレは次にとっておくか。


5年前の一般見学時と同様、相変わらず、つっこみどころ満載の内容だった。たとえば、発酵開始前、麦汁を煮沸させてホップを投入するのだが、最初のほうに投入するホップはビールの苦味を作るのでビタリングホップ、終了間際に投入するのはビールの香りを造るのでアロマホップというのだが、この資料を見ると、いかにも「アロマホップ」という品種がありそうな誤解を受ける。そんなことより、何の品種を使っているのかということを知りたい。


さらにもっと分からない事態に。味をリニューアルときから使用し始めたという、ダイヤモンド麦芽と、従来使用していた二条大麦麦芽を食べ比べたりしたのはまあいいのだが、ホップ2種を「ビターホップ」「アロマホップ」と紹介している。ここでもホップの品種と誤解されるおそれがある。
何度も質問したくなったが、「次で、醸造技師に聞こう」と抑え、第2部の工場見学へ。

しかし、ここでも先ほどの若い女性の案内が続く。ここは仕込み釜で、1回で350ml缶100万本分の量の仕込ができるとのこと。約30キロリットル。日本の地ビール工場は年間で60キロリットル以上醸造する必要があるが、このタンクで作ってしまえば、たった2回分だ。ナショナルブランドのビール工場のひと釜で、地ビール工場で1年間で造るビールの半分が作れてしまう。規模の圧倒的な違いを感じる。


この後、酵母のタンクやろ過装置などを見せてもらう。これは2次発酵タンク。30分くらいの見学を終え、いよいよ第3部の試飲へ。


あれ? 1杯目は、同じ人がおつまみとの相性などを紹介。
 

2杯目は黒とおつまみとの相性を紹介。やはり同じ人だ。


3杯目も・・・おいしい缶の注ぎ方。って知っているよ、もう。

あっという間に試飲の時間は過ぎ、「それではみなさん、本日はお疲れ様でした〜」とにこやかに言われる。しかも「シャトルバスでいらした方は、あと15分で出まーす」などと言っている。
う、質問タイムはゼロだったか・・・

しかーし、下のロビーでバスを待つ間、グッズには目もくれず、さっきの説明の人に声をかけ、以下の質問をする。その若い女性も、僕の勢いにも動じず、にこやかに答えてくれた。
1 ザーツ産、ハラタウ産のホップを使っているということだが、ビタリングホップとアロマホップそれぞれにどちらの品種を使っているのか。
→それぞれ、というわけではなく、アロマホップに両方を使っています。ビタリングホップは、国産のホップを使っています。
2 ザ・プレミアム黒は下面発酵(いわゆる日本のビールの通常の製法。地ビールや本場イギリス・ベルギーのビールは上面発酵が主流)か。
→そうです。
そして、だんだんと核心に迫る。
3 今のプレモルは、リニューアルするに比べ、IBU値(International Bitterness Unit 苦味の単位)が低い気がするが、実際の数値はどうなのか。
→ちょっと今は数値ははっきりとは分かりません。印象で言えば、苦味が少なくなったというふうに感じる方が多いようです。
キター!!! ここからが本番だ。
えーと、といいかけると、その女性は入口を見やり、
「あ、お客様、もうシャトルバスが発車する時間です、よろしければ、歩きながら続きはお答えします」
歩きながらといっても、シャトルバス乗り場までは20歩くらいで着いてしまう。僕は急いで、最後の弾丸を発射した。
「前の味のほうが好きでした。リニューアルして、つきぬけている苦味がなくなって、がっかりしているファンはたくさんいます。ぜひ復刻版を出してください!」
少し声が大きくなってしまったのでびっくりされるかと思ったが、その人はさすがプロ、相変わらずスマイリングを保ちながら、「はい、そのような声も多数いただいています。ぜひお伝えしますね。」
僕らはシャトルバスに乗り込みながら、「ええ、ぜひお願いします。」
・・・と、最後の「します」くらいでシャトルバスのドアが閉まったが、この声が確実に上層部に届くことを祈って、工場を後にした。

結局醸造技師は来なかったが、質問をしてみると、説明の人もかなり詳しいところまで知っていることがわかった。こだわりの人が多い講座だろうから、事前にちゃんと勉強しておくのだろう。それにしても・・・参加していた20人くらいの人は、みんなプレモルの大ファンで、試飲のときなどはみなすごくはしゃいで飲んでいたが、このリニューアルのことはどう思っているのだろうか。聞いてみればよかった。いつ発言するかタイミングをずっと伺っていたせいで、そんなとこまで考えられなかったのが悔やまれる。

もう1回行くしかないのかな(笑)
そのときは自転車で行って、シャトルバスの心配がないようにしようっと。

ちなみに、プレモルのリニューアル後は、順調に売り上げを伸ばしているようだ。
http://www.j-cast.com/2012/06/21136590.html
大衆は支持したかもしれないが、創業者の鳥井氏の魂を受け継ぎ、従来の日本のビールにない新境地を開いたパイオニアとして走り続けてほしいという一消費者の願いは、どこまで届くのでしょうか・・・