2023年8月17~19日、約1年間の準備を経て富士登山へ行ってきました! 練習登山の成果や周到な準備のせいか、僕にしては珍しく大きなドジもなく、やりたかったことすべてやって帰ってきました。ただの個人的な記録なのであまり得るものはないかもしれませんが、富士山に少しでも興味ある人は、雰囲気だけでも感じ取ってもらえるとうれしいです。5回に分けてアップします。
■なぜ富士登山?■
これについては、以前のブログ(https://terryspub.hatenablog.com/entry/2023/05/06/131840)でもふれたとおり、昨年の父の死をきっかけに、やりたいことをやっておこうという気持ちから。登山前には父のお盆の墓参りをして「行ってくるぜ!」と言っておいた。父は若いころは登山をしていて、母とは登山仲間として知り合ったらしい。遺品整理の時に「日本百名山」の本や、古いリュック、登山靴なども出てきた。家族で高尾山や静岡の達磨山に連れて行ってくれたりして、山の楽しさも伝えようとしてくれていた。ところが兄弟3人、誰も登山に目覚めないままだった。
僕は、頑固者の父のことを、生涯理解できない部分もあった。父は富士山には登ったことがないようだが、今回僕が富士山に登ることで、山好きだった父のことを多少理解できるかな、とも思っていた。
■出発前夜まで■
今回、富士登山に当たって、不安だった要素は3つ。「体力」「天気」「高山病」。そのうち、「体力」は練習登山で少し自信をつけた。「天気」は、台風7号が去った翌日が出発日で、この上ない条件。僕は今までグアムで台風で延泊とか、富士山がででーんと大きく見えるホテルに1泊したが、台風で1回も見えなかったなど、雨には祟られてばかりだが、今回ばかりはコイツの気合はハンパないなと神様も許してくれたらしい。
さて、そうなると残る心配は「高山病」だ。僕はこれに対しても、できるだけの対策をしてきた。
まず、高山病に効く薬、というのを徹底的に調べて、漢方薬も含め、それらすべてを入手した。ただしこれらはいずれも利尿効果がすごいということで、高山病で倒れて山小屋で寝込む羽目になったら使うつもりでいた。
高山病予防としてよく言われるのが睡眠、水分、深呼吸、高度順応、だ。本当は前泊して5合目の標高に身体を慣らすのがいいのだろうが、ツアー自体が2泊なので、そこまでは時間がとれないな、とツアー集合時間の3時間前に着き、深呼吸しながら水分を沢山とろうと決めた。さあ、あとは睡眠だ。
僕は生まれてこの方徹底した夜型で、ここ20年くらいは2時に寝て8時に起きる生活だった。富士登山の日は4時起きなので、3か月前から生活時間を徐々に早めていき、ツアー1週間前は睡眠時間を22時から4時にした。僕は、夜ビールを飲むと宵っ張りになり、「早く寝る」という行動が、どうあがいてもこの20年できず妻に呆れられていたのに、人間、目標ができるとやっぱり変わるものですね。もう22時になったら、ちゃんと眠くなるように変わっていった。もし寝るのが22時を過ぎてしまうなら、その分富士山が遠のく気がして、21時30分くらいになるとソワソワするようになった。「すごいね、富士山のパワーって」と妻。そして、睡眠のために、もう一つ秘策を持っていた。
ついでに書くと、僕は夏休みの宿題は最終日にやっていたほうで、しめきりがこないとエンジンがかからない。だから、富士登山の準備も、前日の夜までバタバタやって、「あれ、忘れ物何かないかな」と心配でよく寝られない、というパターンになりそうだった。一生に一回の挑戦、そんな間抜けなことにはできない、と、3か月前から持ち物リストをGoogle スプレッドシートで作り、外出してそれをスマホで見ながら、モノを購入して消し込み、持ち物を少しずつ揃えていった。その結果、2日前には持ち物はすべてそろえ、前日の午前中にパッキングが終わるという、自分史上初めてのことが起こっていた。
自分初の周到な準備を終え、予定通り、22時に就寝した。
5:30 起床
ここ1週間は4時起きだったが、当日はたくさん寝ておこうとこの時間に起床。
6:30 出発
6:50 中央道の府中バス停に到着
7:10 高速バス出発
練習登山した山々が見えるように左側の窓際をとった。アプリ「AR山ナビ」越しに見た。お世話になった奥高尾の山たち、本番へ行ってきます!!
隣の席になったベラルーシ人の若者(男性・横浜在住)は、9:20に五合目に着いた後、頂上まで行って、19:40の帰りのバスまでに下りてくるとのこと。富士山の標準コースタイムは登り6時間(6.8km)下り4時間(7.0km)だから、全く休憩なしのぎりぎりの時間だ。「弾丸じゃん!」って言ったけど「ゆっくり登るから大丈夫」とのこと。いや、ゆっくり登ると帰りに間に合わない時間なんですけど・・・でもその彼からは、当日20時くらいにLINEが来て、無事に山頂まで行き、高山病にもならなかったそうだ。
9:20 吉田口5合目に到着
5合目についたら寒いって聞いていたけど、この日は20度以上はあったと思う、半袖が多かった。さっき書いたとおり、昨年9月、準備の一環として、せめてこの標高2,400mに身体を慣らしたいと、富士吉田に家族で泊まり、次の日にここに来ようと思ったが、富士スバルラインが霧に包まれていて、断念した。なので、ここにやっと来られただけで感無量・・・
さて、最初に富士山の神様にお参り。937(承平7)年に、小御岳山の山頂に創建された神社。小御岳山は、マトリョーシカのように4つ重なっている富士山の先祖たちのうち、一番最初に形成された山だそうだ。これがちょうど今の富士山五合目付近に当たるそう。まさに富士山のご先祖様が祭られている神社、ということだ。
ランチ中、少し頭が痛い。や、やばいいきなり高山病?
水をがぶ飲み、そして深呼吸。
さて、ツアー集合の前に、このツアーを選んだ理由を説明しておきます。
妻子に富士山登山を拒まれたので、今年5月ごろ、ならばツアーでと、自分の登りたいスタイル(っていうとかっこいいけど、自分の年齢と体力でも登らせてくれる)のツアーを探した。
【探したツアーの条件】
■登山ルート:吉田ルート 北側から登る、山小屋が最も多く、初心者向きのルート。登山者の60%がここを選ぶ。ここの次にメジャーな南側から登る「富士宮ルート」も、駿河湾とかの海を見ながら登れるし、登る高低差が少ないので惹かれたが、東京・府中の我が家から見える富士山は吉田ルート側。いつも見ている富士山側を登りたかった。
■ご来光:山頂から見なくていい。山頂からご来光を見るためには夜中に山小屋を出発して、ヘッドランプを頼りに3~4時間暗闇で登る。渋滞も起こって進めず、ご来光に間に合わないことも。寒い。いいことない。ご来光は泊まった山小屋から見れば十分。見え方は山頂とほぼ変わらないとも聞く。山頂までの最もつらい道は、明るいときに登りたい。ところが、ほとんどのツアーが、真夜中出発。僕は30種くらいのツアーを調べたが、この条件により9割は候補から外れた。
■山小屋:個室。登山は睡眠が基本と聞く。大部屋で雑魚寝なんて、翌日寝不足で高山病になれ、と言っているようなもの。この条件も外せなかった。10位ある吉田ルートの山小屋は、昨年まではコロナのため臨時に簡易個室にした所も多いが、それらは今年は元に戻す所が多いもよう。調べた限り、今年個室がある山小屋は3、4軒しかなかった。
■催行人数:少人数。ここからは贅沢な条件だが、どうも大勢がゾロゾロ行く感じは、他の観光地ならまだしも、登るペースや休憩がまちまちな登山にはそぐわない気がしていた。もちろん、吉田口5合目とか6合目からは山小屋とか山頂までそれぞれのペースで行く、というツアーもあるが、これだと、ガイドが受けられず、「あそこに見えるあの山は何ですか」「あとどのくらいで着きますか」など聞けない。やはりこの条件で、ほとんどのツアーが脱落。
■日程:自分の仕事との調整で、いいな、と思ったツアーでも、仕事の都合で申し込めない、ということもあった。
・・・ということで、調べた全部のツアーが脱落! もはや僕のこだわりを叶える方法は、個人のガイドに、プライベートツアーを組んでもらうしかないのかな、と思い始めたとき・・・このツアーを見つけた。富士山の専門家、近藤光一氏が主宰する、8~10名の小規模ツアーだ。
ここでは、1泊のツアーと、それよりもさらにゆったりとした2泊のツアーを年に数回ずつ組んでいた。
1泊のツアー:1日目は山小屋泊、2日目の朝ご来光とともに山頂へ出発、その後下山して17時頃に5合目へ帰ってくる。
2泊のツアー:1日目は同じ。2日目は山頂まで行って、その後、同じ山小屋に戻って泊。3日目に2回目のご来光を見てから下山開始して、10時に5合目着。
1泊コースでも十分、他のツアーに比べたらペースをゆったりととっていて、こっちで行けそうな気もしていたが、ツアーの事務所に電話して、自分が登山初心者であること、去年腰椎椎間板ヘルニアをやったことなどを相談した。親身に考えてくれた末、「ゆったりと登れる2泊をお勧めします」とのこと。まあ、そこまでする必要はないような気もしたが、僕は今回どうせ登るなら、頂上に着いた後、火口を90分で1周する「お鉢めぐり」を絶対にしたかった。その途中、山頂郵便局で家族に手紙を出し、日本で一番高い場所「剣が峰」に立ちたかった。「お鉢めぐり」を最優先、と考えると、念のため、と2泊にしておいた。
12:00 ツアー集合
このように、ほとんど必然のように出会えたこのツアーの集合。売店3Fの一部屋の中で、参加する8名の自己紹介と、富士山専門ガイド・近藤光一さんによる懇切丁寧なガイダンスがあり、この時点で相当いい予感。今日の自分のリュックは10kgとヘビーだったので、ガイダンスを受けて少し減らそうと、思い切って、予備の帽子とか重いゼリーなどは置いていくことにした。これで500gくらいは減ったと思う。この数100gの差が登山では大きいのだ。
最終的に荷物を整理し、登山口に向かった。ツアー客の他の人の名前はすぐに覚えたものの、うまく協力しながらやっていけるのだろうか、という不安もあった。