週末はWan・Can・Run!

イギリスのパブ・ビールにはまって本まで出してしまったが、娘が生まれてからは、飲みに行くとツマの冷たい視線が来るようになり・・・娘がパパから離れていく頃、念願のワンを迎えて、リュックに缶ビールを忍ばせて週末あちこち散歩の日々。イギリスを始めとするパブ情報のWebページはhttp://terryspub.nobody.jp/に引っ越し、休眠中。イギリスでのパブ旅については、こっちのほうに仮にアップしています。https://terryspub2009uk.hatenablog.com

富士山の練習登山デビューは高尾山。ナメてたのでこんな結末に・・・

あ、前回の更新から2年近く経っている・・・(汗)

突然ですが、今回の更新から「富士山」というカテゴリー加えています。

富士山登山前に、犬連れで高尾山ととなりの小仏城山に練習登山に行った話です。

 

1 ちょっとだけ前置き

 昨年6月、父が亡くなり、葬式などでバタバタした後、夏に、いつもどおり多摩川沿いを散歩していた。遠くに富士山が頭だけ顔を出している。

 多摩川沿いの橋からは、北には中央線沿いの駅前のビルやマンション、東は新宿などの都心、南は多摩丘陵、西は東京西部の山々などが見える。目についた気になるものは、何かを調べて、実際に行ってみるのが好きだ。

 俺は、あと何年生きられるのだろう。元気な今のうち、やりたいことやっておかなくちゃな。そう思い、昨年の夏に思ったのが、多摩川からも見える、あの日本一の山に登る、ということだった。

2 GWから練習登山開始!

 というわけで、登山経験ゼロで普段もVitaの散歩以外は何もしてないので、何かやっておかなくちゃいけない。今年に入って、靴、リュック、ツアー申込など、準備を進めてきた。靴に慣れて、実際にリュックを背負って歩く練習のため、このGWは2回は登山しようと決めていた。

 5/4(木)、まずは手始めに選んだのは高尾山。599mという高さは、富士山の3,776mに比べるととんでもなく低いが、まあ、靴とリュックの使い勝手のチェックということで。昨日いろいろ調べて、一番きつい稲荷山コースを上り、時間に余裕があれば、奥高尾の3つの山のうち1つめの小仏城山(670m)まで行き、そこからバス停のある道まで下山するというルートを考えていた。

 それと、今回はVitaを連れていくことにした。高尾山は我が家から電車で30分位と、一番近い山だし、ここに連れて行った様子で、今後の練習登山で連れていけるかどうかを見極めようと思ったからだ。

 

3 本編(長いよ~)

ここからは、次の地図の①~の番号と照らし合わせながら見てほしい。

ちょっと見づらいですが、右の①から赤いルートを通りました。
計算したら9.1kmだけど、体感としては20kmくらい歩いた気がする・・・(笑)

 普段夜型の僕は、富士登山をイメージして、この日は7時くらいに起きて8時に家を出ようと思っていたが、目が覚めたのは8時近く・・・。スタートからドジを踏んで、高尾山口駅に着いたのは10時30分、といきなり遅延気味のスタート。(①)

 とはいえ、たかが高尾山、稲荷山コースは3.1km、90分が目安というので、12時には山頂だ、などと思いながら、Vitaと歩き出す。稲荷山コースは、初めにいきなり階段の道が10分以上続く。3分と歩かないうちに、すぐに休憩が必要になった。

 一応言っておくが、僕は登山リュックを背負っているので、周りからは山慣れしているように見えているはず。うっすら汗をかき、肩で息をしながら、Vitaにペースを合わせている振りをして、休み休み進む。

教訓1 登山のペースは人それぞれ。休むタイミングも違う。

    →富士山登山ツアー大丈夫かな…

ペット用バッグを入れているので、リュックがパンパン 
リサイクルで買った名品 THE NORTH FACE Tellus 45

youtube.com

…10分歩いては休み、10分歩いては休み、を繰り返す。道は人が2人やっと通れるくらいの狭いところが多いので、少しでも広めの道に出たら、すぐに立ち止まって、Vitaを待っている振りをする・・・を10回くらい繰り返した。半分くらいのところに稲荷山山頂の展望台があるはずだったが、行けども行けども来ない。道しるべに「1.2km /3.1km」とあり、最初僕はこの「/」の意味が分からず、「このきつさから言って、すでに3.1km来ていて、あと1.2kmってことだよな」などとアホな解釈をしていた時点で、すでに脳も疲労している、ってことだ。

 え? この階段上がるの、という階段が何度も何度も出てくる。そのたびに、「Vita待ち」をして、息を整える。

 稲荷山山頂(②)に着いたときは、なんと出発してから90分経っていた。家族にもLINEで「メチャきつい。富士山無理かもしれん」と送る。その時点で、今日は奥高尾は無理だと諦めていて、高尾山頂から引き返して降りてこられるかも自信がなかった。

稲荷山山頂の展望台からはこんな景色が見えていたらしいが、
疲れで目が霞んで、よくわからなかった(笑)

 稲荷山山頂から高尾山山頂までは、一度下ったりしたせいか(え? せっかく登ってきたのに! と思うくらい、結構下る)あまり休憩をとらず、ペースを上げる。山頂直前の、6号路と交わる休憩ポイントのベンチで、朝コンビニで買っておいたパンなど食べ、軽い昼食にする。山頂はすごい人だと思うので、お店で食べることはおろか(犬連れだし)、パンをパクつくスペースすらないのでは、と思ったからだ。というか、単に疲れて腹減ったからだって素直に言おう、はい。

 このフライングランチ中に、朝、駅前のインフォメーションセンターでゲットした、登山ルートの地図が、後ろのポケットに入っていないことに気づく。

教訓2 持ち物は、落とさないようにチャック付きのポケットに入れるべし。

 高尾山山頂の直前で、ボランティアのガイドさんに、「犬連れで下りはどのコースがおススメですが」などと聞いているうちに、「よかったら、この詳しい地図使いませんか?」と小仏城山まで載っている、詳しい地図をもらった。それが、冒頭の地図「自然研究路マップ」だ。

教訓3 登山での地図は心のともしび。

  2号路を経由して、やっと高尾山山頂へ(③)。やっぱりすごい人。昨日の時点では、駅前や山頂など、人が多いところではVitaをバックに入れて抱えるつもりだった。(うちの犬は直接の抱っこを嫌がる)でも、ヘトヘト状態の僕はそのままVitaを連れてぐいぐい人込みを歩く。展望台で見えた富士山は、ガスの向こう側なのでうっすらしか見えない。外国人や家族連れ、グループ、カップル、中高年夫婦、色々いて、全然落ち着いて景色が見れない。僕は展望台が大好きで、今日もじっくり見ようと双眼鏡を持ってきていたが、それを出す余裕もなく、展望台を後にする。日陰で何とか一人座れるスペースを確保して、ランチの残りやスポーツドリンクなど、大休止をとる。人間、腹が満たされると大胆になり「このまま下山してまた人まみれの中Vitaに気遣いながら降りるの嫌だな。帰りは行きよりも混雑しそうだし。いっそ多少時間はかかっても、小仏城山まで行ってしまって、小仏バス停を目指したほうがいい」と、大胆な(無謀な?)判断をする。

GWだけあって、この人出。この写真に映っている人の10倍くらいの人がいた。

高尾山山頂から、奥高尾へ下る入口の看板。小仏城山まで「60分」て結構簡単じゃん。
→実際は120分もかかってしまったことは、この時はまだ知らない・・・

 ってことで、時間的には予定よりだいぶ遅れているし、体力的にもきつかったが、小仏城山に向かって出発。最初の目印「一丁平展望台」に向かって、歩き出す。階段の下りが続くが、人は少ないので、時々視界には誰もいなくなるくらい。5分に1回くらい人とすれ違うくらい。そうだよ、これが本当の登山だよな。人の目もないので「Vita待ち」をしなくても、堂々と休憩をとれる(笑)。ただ、気になるのは、あちらからの人は来るが、自分と同方向に行く人は誰もいない、っていうこと。おそらく、逆ルートは、帰りのバスも少なくなるからなのだろう。

がらーん。これが山登りだよね。高いところを避けて回り道をする「まき道」も多いらしいが、トレーニングなので、すべて王道の登山道を行こうと決めていた。

ここは「東海自然歩道」の起点でもあるらしい。大阪までを結ぶ1,700kmの道。50日くらいかかるっていうけど、誰か歩いた人いるのかな?

 一丁平の展望台(④)で、はっと息をのむ。人は誰もいない。見える景色はさっきの高尾山頂と同じ。高尾山頂からのコースタイムは30分。なんで、みんなここまで来ないんだろ。うれしくて、数少ない登山カップルが自撮りをしていたので、「写真撮りましょうか」と言って、「よかったら、僕らのも撮ってもらえませんか」と観光地でよくやる手段を使って、Vitaとの唯一のまともな2ショットをとってもらう。

がらーんとした展望台を独占。後ろには富士山があるのが、逆光で映っていない。
靴は今年買ったmont-bell マウンテンクルーザー400ワイド。
トレッキングシューズはやっぱり歩きやすく、1回も滑ることはなかった。

リュックを置いたら、「ほいきた」とすぐにあごのせ休憩。
まだ「抱っこ」はせがまず、道行く人から「偉いね~」って言われて、上機嫌。

 やばい! よすぎる。順調すぎる。楽しすぎる。体は疲れているし、リュックも、トレーニングもかねて、缶ビール2本とか防寒具とか意味なく詰め込んできて8kgくらいあったので(通常、富士登山でも装備は5、6kgらしい)、肩、腰にメチャ食い込んできてつらいのだが、そんなことは歩いているうちに忘れてしまう。

 Vitaは、高尾山の最初のほうでは階段ではなく側道の坂を好んで歩いたが、そのうち階段に慣れてきたらしく、階段を歩くようになってきた。僕は膝を上げるのがつらくなってきて、側道を小さい歩幅で歩くほうが楽だった。僕が側道の坂、Vitaが階段という、わけのわからない図式でずんずん進む。

教訓4 疲れたら小刻みに足を出すべし。(犬を除く)

 そして・・・やっと小仏城山へ(⑤)! もう16時だったので、2店の売店も閉まりかけていて、100人以上は座れるベンチには、10人くらいしか座っていない。山頂からは今後にした高尾山や新宿の街並みも見える。リュックを降ろすのも忘れて、夢中で双眼鏡を覗く。舞い上がりすぎて、結局どのへんが我が家か、とか、どれが多摩川か、というようなことが一切わからなかった。

小仏城山山頂。高尾山(599m)よりも高い、670m。
すぐそこには、今来た高尾山が見える。

ここではなめこ汁が定番らしい。次の目的地小仏峠まで0.9km

 さて・・・肝心の帰り道。僕は昨夜の調べで、ここから小仏バス停までは1時間半は見ておこうと思っていた。帰りのバスは今からちょうど1時間半後の17:40発。1時間おきなので、それを逃すと1時間後。高尾駅まで5km、20分位乗るらしい。

 念のため、茶屋のおじいちゃんに「ここから小峠バス停までどのくらい歩きますかね?」と聞いてみたら「あんた若いから1時間くらいで行けちゃうよ」とのこと。いや、若くない(今年で52歳!)んすけど・・・と思うより「1時間くらいで」という甘い言葉のほうが、刺さってしまった。今から行っても30分位時間が余ってしまうなあ。バス停のそばでビール飲めてトイレもあるみたいだから…ゴクリ、と夢想しながら、次の目的地・小仏峠を目指す。山頂で、持ってきたビールを飲んだり、300円のカップラーメン(山なのに良心的!)を食べたりしなかったのは、どこかで虫が知らせていたのかもしれない。

 ここから峠に向かってずんずん下っているうちに、膝が限界にきていることに気づく。このころになると、向こうから来る人すらほとんどいない。

 山頂からの下り、「ププ、ププ」という電子音みたいな音が断続的に聞こえ、それが鳥の鳴き声なのか何なのか、八王子出身の妻に後で聞いてみようと、何度か動画を撮った。また、富士山と相模湖が両方見えるベンチがあり、そこでゴロンと横になったり、そういえば全然使わなかったらちょっとやってみようと、自撮り棒で写真撮ったりしていた。通常なら20分のコースタイムなのに40分くらいかけてしまった。自信たっぷりに「バス停で時間つぶすよりも、こっちのほうが正しい時間の使い方だよな」と。

写真右上が富士山。手前に相模湖。今日のご褒美のような絶景。ああ、呑気(笑)

この頃はVitaは隙あらば抱っこをせがむ。気づかないふり(笑)

 さて、最後の急な階段を下って、「小仏峠」の道標が出てきた。時間は17:00。イエーイ、バスまでの時間調整もちょうどいいじゃない? ゴールテープを切った気になって、道標をよく見ると…

 小仏バス停 2.8km

一番下に「小仏バス停」までの距離が。見間違いかと、何度も見てしまった。。。

 ん?? 

 1kmは15分だというから、あと40分で2.8kmって…間に合わない!! 考えるより早く、棒のような足を動かしていた。とにかく、行ってみるしかない!

 峠からの、林道のような細い道を早足で下る。いや、早足と思っているのは自分だけで、はたから見ると、小刻みにのったりのったり歩いている人にしか見えないだろう。体重を前にかけ、両手を目いっぱい振って、歩くというより、胴体を前に前に運んでいるイメージ。日没まではまだ1時間以上あるのに、北側の道なので、薄暗くなってきた。人も一人も歩いていない。もし、自分の足がつって動けなくなったら… 携帯が通じなかったら… そんなことを考えるのももどかしく、とにかく歩こうと思った。階段よりは歩きやすいが、そこそこ傾斜がある砂利道をひたすら歩く。妻とよくテレビで見る長距離レース(Great Raceとか)の、ゴール直前の人の気分。身体はボロボロだが、気持ちだけで動く、みたいな。ただし、僕が急いでいる理由は名誉でも賞金でもなく、バスに間に合わなかったときのタクシー代、なのだが・・・妻の怒りの顔が浮かび、僕の足を前に出させる(笑)。

 休みなく無我夢中で歩いて、ようやく舗装された道に出る。遭難の危機だけは免れたようだ(笑)。スマホを見ると、時間は17:20。Google Mapで見ても、慌てているせいか小仏バス停が見つからず、ここからどのくらいの距離なのかわからない。犬の散歩をしている地元の小学生2人に聞く余裕も、犬を交流させる余裕もなく、黙々と追い越す。膝を曲げると痛いので、膝を伸ばして、競歩のように歩く。今ここで無理すると、今後の競技人生に響くから、理性あるリタイアをしたほうがいいのでは、と思ったが、よく考えたら、特に僕には今後の競技人生はなかった。

 バスに乗る前にはVitaをペット用バッグに入れなくてはいけない。Vitaはバッグに入ることをぐずることがあり、下手をすると5分くらい要することもある。ペット用バッグは体積をとるので、中にいろいろ荷物を入れてからリュックに入れている。その移し替えもしなくてはいけない。もともと、バス出発前の10分前には着くことが必要と思っていた。

 時刻は17:30を回った。舗装された道には、バス停の気配も出てこない。僕はこのとき、なぜか、子どものころ読んだトルストイのある民話を思い出していた。

「人にはどれほどの土地がいるか」=パホームという農民が「太陽の上がっているうちに歩いて囲んだ場所全部の土地を得る。戻ってこられなければ代金を失う」という土地の買い方をして、欲張って長い距離を歩きすぎたために、最後は走ってゴールに向かうが、走りすぎたために死んでしまう、という話だ。

 あの小仏城山の売店のおじいさんの「1時間」を鵜呑みにしてはダメだったのだ。途中で余裕こいて、動画撮ったりベンチに横になったり自撮りしていてはダメだったのだ。 

 ああ、神様、ワタシ、山登りをなめていました、富士山に登るまでに、心を入れ替えてちゃんと練習しますから、どうか今回、バスに間に合わせてください・・・。

 自分の足じゃない気がする2本の棒を交互に前に出して、気持ちが錯乱して、もうなんか、どうにでもなれ、バス逃したら、いっそ高尾駅までもう5kmくらい歩いてやるか・・・な~んてあきらめかけたとき・・・アスファルトの道の左側に、バス停に停まっている見慣れた京王バスが現れた!!

 その時、怖くて(というか余裕がなくて)スマホの時計が見られない。とにかく、今はまだ出発していないわけだ。運転席の横で、荷物を整理してVitaを入れながら、「乗りま~す」といえば、情けをかけてくれるのでは? 競歩しながらシミュレーションしていたその方法を実行すると、Vitaは疲れていて途中から抱っこをずっとせがんだせいか、バッグにするりとすぐに入ってくれた。運転手には「乗りまーす」と言う必要もなく、バタバタっとバスに乗り込んだ。スマホを見たら、17:38。・・・間に合った。

教訓5「コースタイム」「他人の案内」はあてにならない。スケジュールは余裕をもつ。

この右側のが、ペット用バッグ。

 初めての富士登山練習は、この上ないドジな結末で終わったが、身体でいろいろ教訓を覚えた。2日たった今日、「筋肉痛」を通り越して、膝とふくらはぎを怪我したような激痛が・・・トホホ、はい、まさに登山の厳しさを身体で覚えましたです。

 今回の教訓を踏まえて、またぼちぼち準備していこう・・・。GW中に2回登山するのは無理になってしまったが。

 それにしても・・・久しぶりに森林の中を歩き、すれ違う人・犬たちと交流して、知らない道・地名を開拓して・・・(小仏ってあの渋滞のメッカ「小仏トンネル」の小仏ですよ~)総じて楽しかったことは間違いない。

 最後まで文句ひとつ言わず(言いようがないか)、5kgの小さな体でどんな時にもぴったりついてきてくれたVita(6歳・オス)に感謝。犬はタフだなあ。帰宅したらすぐシャワーしてやりました。